一般社団法人訪問看護支援協会 広報部長 坪田康佑
訪問看護に携わる皆様へ。
近日、訪問看護師が刃物で切りつけられるという痛ましい事件が発生し、私たちの業界に大きな衝撃が走りました。また、有名人による医療従事者への暴行事件も報道され、医療現場での安全問題が社会的注目を集めています。
訪問看護という業務の特性上、私たちは患者様のご自宅という密室環境で、しばしば一人でケアを提供しています。この環境は時として、大きな安全リスクを伴うものです。今回、訪問看護師を含むすべての医療・介護従事者を守るための法整備を求める署名運動を個人で立ち上げましたので、皆様にご案内申し上げます。
訪問看護の現場では、他の医療従事者とは異なる特有の困難があります:
- 医療機関と違い、緊急時の応援を呼びにくい
- 訪問先の環境を完全に管理できない
- 利用者だけでなく、同居家族など様々な人との関わりがある
- ハラスメントや暴力被害を受けても「我慢すべき」とされがちな風潮
日々の業務の中で、皆様が感じている不安や経験された困難な状況を、社会全体の問題として認識してもらう必要があります。
東京都条例と全国法制化の必要性
2025年4月に東京都ではカスタマーハラスメント防止条例が施行されました。これは前進ですが、訪問看護は全国どこでも安全が保障されるべきサービスです。地域間の格差なく、すべての訪問看護師が安心して働ける環境整備には、全国統一の法的枠組みが不可欠です。
訪問看護の人材危機
訪問看護師の需要は年々増加している一方で、人材確保は困難を極めています。その背景には、安全面への不安があることは否めません。実際に、ハラスメントや暴力被害の経験から訪問看護を離れる方もいらっしゃいます。このままでは訪問看護のさらなる人材不足を招き、地域包括ケアの根幹が揺らぐことになりかねません。
私たちが求める具体的な対策
- 訪問看護に特化した安全対策の法制化:
- 単独訪問の安全基準の明確化
- 緊急時対応システムの義務化
- リスクアセスメントの標準化
- 訪問看護報酬と安全対策の連動:
- 安全対策を講じることを報酬請求の条件とする
- 安全対策導入への加算制度の新設
- 専門的な相談・支援体制の確立:
- 訪問看護師が匿名で相談できる公的窓口の設置
- ハラスメント被害後のケアプログラム提供
これまでの取り組みと今回の署名運動
私は一般社団法人日本男性看護師会において、7年間にわたり厚生労働省に医療従事者の安全対策を訴えてきました。その活動を通じて、地域医療介護確保基金を活用したセキュリティグッズの購入支援や安全研修プログラムの作成など、一定の成果を得ることができました。
しかし、訪問看護師の安全を真に確保するためには、より包括的で強力な法的枠組みが必要です。そのため、今回の署名運動を通じて、訪問看護師を含む医療・介護従事者の安全を守る全国法制化を求めています。
皆様へのお願い
訪問看護の最前線で働く皆様こそが、この問題の当事者です。ぜひ署名にご協力いただくとともに、同僚やご家族、利用者様のご家族など、周囲の方々にも広くこの活動を知らせていただければ幸いです。
皆様の声が集まることで、訪問看護師が安心して働ける環境づくりに向けた大きなうねりとなります。そして、それは質の高い訪問看護を利用者様に提供し続けるための土台となるのです。
ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。